海外旅行ブームの始まり
20代後半。
私の中で“海外旅行ブーム”がはじまった。東南アジア好きの友人に連れられ、タイ旅行が最初だ。バンコクの空港を出た瞬間、肌にまとわりつく湿気と、甘くて辛い香りが混ざった夜気に包まれて、「ここは日本じゃない」と身体が先に納得した。屋台の炎が高く上がるたび、フライパンが金属音を立て、通り過ぎるバイクの排気が少しだけ目にしみる。手に持ったプラスチックカップの氷がカランと鳴って、異国の夜が音を立てて始まる気がした。
翌年、その翌年にはカンボジア、ベトナム、フィリピン。
朝もやのなかに浮かぶ遺跡の輪郭。湯気を立てるフォーにライムを搾ると立ちのぼる酸味。海に足を入れた瞬間の、水の軽さと塩の匂い。どれも、私の身体に小さな印をつけていった。いつの間にか、行き先を検索すること自体が、旅の一部になっていた。飛行機の路線図を見るだけで、胸がふっと軽くなるあの感じ。
旅先をヨーロッパに広げて
そんな勢いのまま、時間を持て余した私は友人とフランスへも行った。
石畳の街を歩いていると、靴底がコツコツと乾いた音を立てる。カフェの椅子はどこか華奢で、砂糖をくるくる回す小さなスプーンまで絵になる。知らない街で、知らない時間を過ごしているのに、なぜだか“自分の時間”だけが、とてもはっきりと輪郭を持つのだ。
私が私を褒めたくなった日
そして、転職を期に、有給というまとまった時間がぽん、と私の手のひらに落ちてきた。
決めた。一人で行こう。
今にして思えば、これは私が私を褒めたくなる選択のひとつだ。心のどこかでずっとやってみたかったこと。誰のせいにもできない旅。自分の足で立って、自分の言葉で話す旅。
その夜、私は携帯の小さな画面から、「ヨーロッパ 絶景」「ヨーロッパ 世界遺産」とGoogleに打ち込んだ。画像検索のタブを開くと、四角い写真が次々に流れてくる。石造りの街並み、乾いた日差し、古い橋、光の海。クリックするたび、違う場所の空気がディスプレイからふっと漏れてくるようで、背筋がすーっと伸びる。候補地は自然と絞られていった。イタリアとスペイン。
ローマに降り立ち、バルセロナから帰る。いい。響きだけで胸が高鳴る。
海外一人旅の幕開け —— 私が背負ったバックと、0時13分の出発
有給の日程が確定した。よし、いざ前進。
私は「飛行機は節約する」と決め、格安サイトを片っ端から開いた。タブがどんどん増えて、経由地の名前が乱舞する。ドーハ、イスタンブール、ドバイ、フランクフルト。経由時間と運賃が、画面のなかで数字のダンスを踊る。私はほとんどゲームのような気持ちで、スイスイ、スイスイとボタンを押していった。想像を超える安さに「え、ほんとに?」と何度も眉を上げながら、最終的には“ローマIN、バルセロナOUT”のチケットをGet。
結果、旅は16日間と決まった。
取れたーー!
取れちゃったーー!
翌日、念のためEチケットを見直した。
0時13分出発。
……ん? 0時13分? それって、明後日の深夜ってこと? つまり、日付が変わった直後?
えっ? やっばーーーい!
カレンダーを指でなぞる。明日と明後日の境目が、急に目の前に落とし穴みたいに口を開ける。でも、私は深く息を吸って、行くしかないと自分に言った。勢い余ってやらかしたのも含めて、ぜんぶ自分の旅だ。
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私は“バックパッカー”
出発前に、私は“バックパッカー気取り”を始めることにした。
そう、まずはバックを買いに行く。
そして、
旅行本は2か国分。 他には何も買わない。必要なものは必要なぶんだけ。足りなければ現地で買う。そう、これは冒険でもあるけれど、同時に自分を軽くする練習なのだ。
その夜、部屋のベッドの上に荷物を並べた。
Tシャツを三枚、薄手のシャツ一枚、下着、デニム、羽織、帽子、メイクセット、ヘアーコテ。医薬品は最低限。
パックパッカー気分で旅行する時にはハイキングや登山用が活用しやすい。細かく分類できる小分け収納、もしもの時の貴重品の隠し場所が豊富。
そして私は貴重品を、このミニケースで対応してバックに付けられるし、手持ちも楽って感じで対応。(自分の胸元が一番安全である!)↓↓↓↓
私の趣味「ことりっぷ」収集。
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今では私の楽しみの一つが、旅行本「ことりっぷ」を集める事。まだ20冊程度だが、旅はこれからも続く。
冒険の旅が始まった…
そして、2015年6月13日 夜。冒険の旅のはじまり。
玄関でお気に入りの赤い靴を履き、ドアを閉めると、いつもより鍵の音がはっきり聞こえた。電車の窓は自分の顔をうっすら映し、ホームを離れるときの微かな揺れが足元から伝わってくる。バッグのショルダーハーネスを少しきつめにする。肩の骨に重さが乗って、身体が旅モードに切り替わる。
空港の空気は、いつ来ても少しだけ非日常の匂いがする。
カートを押す音、遠くから流れるアナウンス、チェックインカウンターの小さなLED。バックパックを秤に乗せると、数字が静かに止まる。係員の方が笑顔でタグをつけ、パスポートに目を通す。その一連の所作を眺めながら、私は自分の心拍が少しだけ早くなっているのを感じていた。ただ、その時の自分を今もはっきり覚えている。希望と冒険心に満ち、一人旅行感を漂わせたあの日を。
こんな時間に携帯が鳴る
そのとき、スマホが震えた。
——母からの電話。
「いつから行くの?」
「ちょうど今から飛行機乗るよ」
「そう。気を付けないよ。生きているかどうか、毎日連絡しなさい!」
ちょっと怒ってますか? お母さま。
受話口から伝わってくるのは、怒りよりも、心配が形を持ったような圧。「はい、必ず連絡します」と答える。私は気づいた。生死を彷徨う決断とも取れるジャッジをしたのだと。
終わりに・・・
こうして、私の初めての海外一人旅が始まった。
後から振り返れば、あの0時13分の出発も、バックパックの重さも、母からの電話も、すべてが**“幕開けの儀式”**だった。
ページの端に指をかけて、次の章をめくるみたいに。
2015年6月13日の夜、私は自分で自分の物語の続きを開いたのだ。
今も尚、懐かしく、恋しい海外一人旅。
Noteに書き連ねながら、また蘇るあの日の一人旅をしている私がいる。

